透輝石 diopside CaMgSi2O6 〜 灰鉄輝石 hedenbergite CaFeSi2O6 [戻る

※普通輝石と光学性は大差ない。
単斜晶系 
二軸性(+),2Vz=50〜60° α=1.664〜1.732 β=1.672〜1.745 γ=1.693〜1.757 γ-α=0.025〜0.029(屈折率は灰鉄輝石成分に富むものほど高いが,干渉色は大差ない)


色・多色性/灰鉄輝石成分に乏しいものは無色〜淡緑色で多色性なし。灰鉄輝石成分に富むものは緑色で濃淡の弱い多色性がある(X´=淡緑色,Z´=緑色)。

形態/
短柱状〜柱状。不規則他形

双晶/
(1 0 0)の双晶が存在することがあり,それが2〜数回反復していることもある。ややまれに(0 0 1)の双晶も時に見られる。なお,(1 0 0)の双晶ではへき開線は双晶境界で連続しているが,(0 0 1)の双晶ではへき開線が双晶境界で屈曲する。

へき開/2方向(C軸方向)に明瞭。C軸方向からはほぼ90°に交わる格子状に見える。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見える。
消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,最大40°前後(b軸方向から見た場合)。
伸長/消光角が大きいので伸長の正負はわからない。


累帯構造/時にMg⇔Feなどの置換による累帯構造があり,Feの多い部分は明瞭な緑味を帯び,Mgの多い部分は無色に近い。


産状/透輝石はかんらん岩類などの超苦鉄質岩の重要な造岩鉱物。それは大抵1%程度のCr2O3を含み肉眼的には鮮緑色だが鏡下では無色に近い。エクロジャイトの主要造岩鉱物としてはアルマンディンなどと共生する。そのほか,ドロマイトスカルンにも方解石・かんらん石・金雲母などと共生し,接触変成作用を受けた蛇紋岩中にもへき開の発達した粗大な結晶で産する。また,蛇紋岩メランジェ中のはんれい岩などがCa交代作用を受けてできたロジン岩などにぶどう石・斜灰れん石・緑泥石・ペクトライトなどと共生してよく見られ,この場合,柱状〜繊維状集合体をなし,このものは透輝石の端成分に近い。
灰鉄輝石はスカルン中に細粗様々な粒状・柱状で豊富に産するが,スカルン以外ではあまり産出がない。アンドラダイトと共生する場合もあるが,アンドラダイト+石英+磁鉄鉱の組み合わせよりもよりも還元環境・高温で生じる。しかし単斜輝石がスカルン中でアンドラダイトや磁鉄鉱と共生する場合はFe3+が卓越し,鉄が多い条件ではあるが,Fe2+がやや欠乏するため,灰鉄輝石よりも透輝石成分が多い傾向がある。



かんらん岩中の透輝石

Di:透輝石,En:頑火輝石,Ol:かんらん石

かんらん岩には透輝石・頑火輝石がよく見られ,これらはMg>>Feである。透輝石は頑火輝石よりもはるかに干渉色が高く2次に達し(頑火輝石は1次の灰〜淡黄色程度),かつ,斜消光することで区別は容易である。一方,かんらん石は屈折率・干渉色ともに輝石類より高いので,割れ目や輪郭が太い線で一層はっきりしており,へき開は輝石類ほど認められない。
なお,かんらん岩中の透輝石には双晶は少なく,多くは単晶である。また,1%程度のCr2O3を含み肉眼では鮮緑色だが,偏光顕微鏡下では無色に近い。




スカルン中の透輝石
Di:透輝石,Mt:磁鉄鉱

スカルン中には透輝石〜灰鉄輝石が豊富に産する。磁鉄鉱やアンドラダイトは3価のFeに富む条件でできるので,それと密接に共生する単斜輝石は灰鉄輝石成分(Feは2価)に乏しい傾向がある。上画像のものは透輝石の端成分に近く,平行ニコルでは無色。なお,クロスニコルでは(1 0 0)の双晶をなしているのが分かる。